「急な痛み」が起きたとき、あなたはどう対処しますか?
絶対にやってはいけないこと
「急な痛み」に対してコレは絶対にNG
・ゆっくり風呂に入る
・マッサージをする
・運動をする
・酒を飲む
これらはいずれも血行を良くするための行為なので「疲労」には良いですが「急な痛み」に対しては駄目です。どうして駄目なのかというと・・・
急な痛み=炎症だから
単純な疲労からくる痛みもあるので、正確には「炎症を疑ったほうがよい」が正しいです。
炎症と疲労はまったく違います。
「炎症」とは?
体が何かしらの刺激(外傷・やけど、 細菌の侵入、薬物・放射線など)を受けて有害な物質を取り除こうとする防御的反応(免疫システム)
炎症の主な特徴
・発赤(赤くなる)
・温熱(熱を持つ)
・痛み
・腫れ(はれ)
・機能不全
あまり小難しく考える必要はなくて、炎症とは一言でいうと、傷口です。
傷口に対して触ったり、いじくり回したりしませんよね?治るまで安静にしておくのが普通なはずです。つまり、
疲労→温める
炎症→冷やす
このように覚えておくとラクです。
では実際に、炎症がおこったら?
結論を先にいうと
炎症がおこったら真っ先に冷却(アイシング)をしてください。
さらに緊急を要する炎症の場合には、躊躇なく抗炎症薬を使用してください。(例えば、スズメバチ刺傷、ドクガ刺傷、クラゲ刺傷のような外部から炎症を引き起こす生理活性物質が注入されることによって起こる炎症。)
このように炎症のタイプによって、アイシングか?抗炎症薬か?を決定します。
炎症ではないのに「炎症」と診断
とてもややこしいのですが、
先ほど言ったように、熱をもったり赤くなった状態を炎症といいますが、その他にも日本では、正常ではない状態のことを「炎症」と呼んでもよい。というルールがあります。
例えば、筋肉や組織が傷ついているわけじゃないけど動かすと痛い。←これは実際のところ炎症ではなく、筋膜の癒着や関節可動域の制限が原因の痛みです。でも日本ではこれらもまとめて炎症と呼んでいます。
要するに、「痛いのは全部、炎症だよ。」って解釈です。かなり適当です(笑)
なので、整形外科などで○○炎と宣告されたからといって、それを鵜呑みにはできないということです。なぜなら炎症じゃないんだから。
炎症でないものに対して、炎症のような処置を加えれば事態は悪化します。
炎症には「慢性炎症」と「急性炎症」があります
慢性炎症は、別の新たな炎症を引き起こすこともあり非常に厄介ですが、今回の記事は急性炎症についての対処法なので、こっちに関しては単純です。
急性炎症はとりあえず冷やせ
「体を温める=健康」←皆このワードに洗脳されすぎです。
急な痛みが出た場合も、多くの人は血行を良くしようと温めますが、これは痛みを悪化させるのと治りを遅らせる行為です。
これをするぐらいなら何もせず放置しておくほうがまだマシです。
なんだかよく分からないときに、とりあえず温めておけば間違いないと思ってしまうのが一般の方なわけですが、こういう人達はもっと冷やすことの重要性を知っておいたほうが身のためです。
ちょっと待って!
炎症とは、有害な物質を取り除くための防御的反応(免疫システム)でしたよね?
ということは、冷やして炎症を抑えてしまったらその仕事を邪魔することになるのでは・・・?
冷却(アイシング)をする2つの意味
①二次的低酸素障害の防止
②筋スパズムの抑制
①二次的低酸素障害の防止
細胞は血液を介して栄養・酸素を得ています。
しかし 内出血を起こすと、損傷した細胞膜や毛細血管から流出した細胞液・血液が、細胞内にたまって周囲の毛細血管を圧迫して血液の流れを阻害し、周辺の細胞組織への栄養・酸素の供給が断たれてしまいます。
周辺の細胞組織への栄養・酸素の供給が断たれる状態が続くと、それら細胞は死滅します。←これが二次的低酸素障害
アイシングで血管を収縮し、血液量を減少させ、細胞の新陳代謝をあえて低下させることで、損傷した血管から流出する細胞液・血液の量が減少するため、内出血時の二次的低酸素障害の発生を防止できます。
血液の冷凍保存みたいなイメージです。
②筋スパズムの抑制
「筋スパズム」とは?
どこかしらの筋肉や関節を痛めた際に、患部から脳に痛みが伝わり、それを受けて脳から周辺組織に対して筋肉を硬直させるよう命令が出されること
筋スパズムが起こると痛みが増し、そのことがさらなる筋スパズムを引き起こすという悪循環が生じます。
アイシングによって痛感神経をマヒさせ、脳への痛みの伝達が弱まることで、筋スパズムの程度をコントロールできます。
アイシングの必要性についてまとめると・・・
損傷が周囲に拡大することを抑えるため、あるいは炎症レベルをコントロールするために冷却は必要です。
免疫システム的にも炎症は重要な機能ですが、かといって何もせず放っておくと筋肉の硬直範囲は拡大し、痛みも増し、周りの組織まで低酸素状態に陥るため危険です。(炎症のレベルや種類にもよるが)
生体にとっての非自己の排除を助ける一方で、自己である生体そのものにも一定の損傷や苦痛を引き起こす性質も持つのが炎症です。
その他にも、
・運動時の負傷の防止
・筋肉痛・疲労蓄積の軽減
・止血
これらを目的としてアイシングが行われます。
炎症がおこるメカニズム
病原体が侵入した局所の血管が広がり 血流が増える
↓
そこに流れてきた白血球が血管から組織に漏れだす
↓
白血球が異物を認識して排除する
↓
一度は傷ついて荒れた状態になるが、その後は修復へ向かう
このような一連の反応です。
つまり炎症部分には血管が拡張し、大量の血流が流れてきている状態なので、冷たいはずがないのです。だから温める必要なんてありません。
にもかかわらず炎症部分に対して、そこからさらに加温を加えるというのは、火に油を注いでるのと同じ理屈です。
とにかく、触らない・温めない・動かさない。
傷口を広げるな!ってことです。
炎症は筋肉を固くする(=筋スパズムをおこす)
「筋スパズム」とは?
特定の筋肉や関節を痛めた際に、患部から脳に痛みが伝わり、それを受けて脳から周辺組織に対して筋肉を硬直させるよう命令が出されること
いったん炎症がおこると、傷口を開かないようにする為に、周りの組織を固くします。そのせいで運動に制限がかかり痛みが生じることもありますが、その過程は仕方のないことです。
ですが、アイシングを使えば筋スパズムの程度はコントロール可能です。
炎症が修復し落ち着いてくると、筋肉は硬くなり血流が阻害され、疲労した局所に酸素と栄養が行き届かなくなります。
要するに血流が悪い状態になります。
なので、修復完了後は固まってしまった箇所を入念にほぐしてあげることが重要で、温めたり動かしたりマッサージしたりするのはココからです。
もしかすると、体(筋肉)が固い人って・・・
もしかしたら、組織(筋肉)が固い人って、炎症体質で筋スパズム起こしまくりなのかもしれません。
こういう人は副交感神経を優位にするような生活にバランスをとってあげることで変化していくのかもしれません。
炎症かどうかをどう判断すればいい?
痛い部位を自分で触ってみる。
痛くない部位よりも熱く感じる場合は「急性期」と判断して冷やすといいでしょう。逆に冷たく感じる場合は「慢性期」と判断して温めるといいでしょう。
急性炎症はだいたい発症から2~3日までが一般的です。なので痛みが急激に出てから2~3日くらいは冷やすのが無難です。
判断が難しい場合は?
なんだか分からないけど急に痛い。けど触ったり押したりしても痛くない。これは腰痛などでよくあります。
こういう場合は「急性炎症」と判断したほうが安全です。
急性の痛みに対して、温めてしまって悪化するケースがよくあります。自分で判断できない場合はとにかく冷やして安静にする。絶対に温めたりマッサージしたりせず、お風呂はシャワーのみにすることです。
アイシングが有効な症状
熱中症、脱臼、ねんざ、つき指、肉離れ、慢性的な痛み
ぎっくり腰、むちうち、打撲、鼻血、日焼け
偏頭痛、寝違え、肩こり、五十肩、ひざ痛、腱鞘炎、眼精疲労、歯の痛み、のどの痛み(風邪の初期症状)
アイシングのやり方
具体的な冷却方法についてはコチラ↓
アイシングの種類
アイシングには氷、コールドパック(保冷剤)、冷湿布、コールドスプレーなどを使います。それらが手元にない場合には流水にさらす方法もあります。
このうち、患部の表面だけでなく深部まで冷却するという目的を達成するために最も優れているのは氷です。(周囲から熱を奪う能力すなわち冷却効率という点において最も優れている)
・コールドスプレーは、一時的に痛みを緩和させるのに役立ちますが、氷よりもアイシング効果は低いです。 ・コールドパック(保冷剤)も冷却能力は氷より劣ります。 ・冷湿布は、皮膚の表面温度を約2℃下げる効果を持ち、効果は2-4時間持続しますが、深部を冷却する能力に欠けます。 |
アイシングの時間
アイシングの効果をさらに高める『POLICE』
「POLICE処置」とは?
負傷時に行うべき5つの応急処置法(保護・適度な運動・冷却・圧迫・挙上)の総称
負傷時にこれらを同時に行うことで、より大きな効果を発揮します。
なお、POLICE処置をするにあたって、道具としてはコレだけ持ってれば十分です。最低でも冷却と圧迫は同時に行えます。
アイシングをする際の注意点
・冷やし過ぎによる凍傷に注意する。
・氷を使用する場合、家庭用冷凍庫で作ったものや市販のものは摂氏0℃以下に冷却されている場合があり、そのような場合は氷を水に濡らして表面を溶かすか、水を混ぜて氷水にして対処する。
・アイシングをしたまま眠ると凍傷を引き起こす恐れがある。
・皮膚の弱い者がアイシングをする場合には、アンダーシャツの上から行うなどの配慮が必要。
・心疾患や局所循環障害を患っている場合にはアイシングは禁物。
化膿の防止
皮膚に傷口ができた場合は、そこから細菌が侵入して化膿を引き起こす恐れがあるため、化膿防止のためにアイシングの前に傷口を消毒し、絆創膏を貼ること。
炎症どめ(抗炎症薬)について
過剰な炎症で人体を傷つけてしまうアレルギー疾患や、炎症を外部から引き起こす生理活性物質が注入されることによって起こるスズメバチ刺傷、ドクガ刺傷、クラゲ刺傷などの治療に際しては、炎症のデメリットを抑制する必要があり、そうした目的で用いられるのが抗炎症薬です。
炎症に対しての基本はアイシングですが、ヤバイ!ときには躊躇なく抗炎症薬を使うべきです。
というより、抗炎症薬とアイシングのダブルで攻めます。
炎症どめ(抗炎症薬)には2種類ある
①ステロイド系(SAIDs)
②非ステロイド系(NSAIDs)
ステロイド系の抗炎症薬は、強力な抗炎症作用、鎮痛作用、免疫抑制作用を持ちますが、副作用が強く、その制御が難しいため、一般的な痛みの治療には、非ステロイド系が用いられます。
ステロイド系抗炎症薬の副作用が問題視された後に登場した、ステロイドではない抗炎症薬が非ステロイド系(NSAIDs)です。
①ステロイド系(SAIDs)
有名どころ→ ベトネベート、フルコート、リビメックス
②非ステロイド系(NSAIDs)
有名どころ→ ロキソニン、セレコックス、イブ、バファリン
それぞれの副作用について
緊急時には、ステロイド(SAIDs)
スズメバチ刺傷のような割と危険な場面では、ステロイドを使用するのが普通です。多少の副作用を気にするよりも、ステロイドの強力な抗炎症作用のほうを選択したほうが安全です。
具体的な処置方法についてはコチラ↓
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