四十肩・五十肩の原因
大前提として
たんに「四十肩・五十肩」といっても、治るレベルと、治らないレベルの両方が存在します。
治るレベル | 治らないレベル |
生理的な範囲 | 病理的な範囲 |
マッサージ師、整体師 | ドクター、PT、OT、柔整師 |
徒手療法 | オペ、運動療法 |
本当の四十肩・五十肩は、治せないレベルのことを指します。この場合、一度の施術で治すことはまず不可能です。
基本的な考え
四十肩・五十肩の原因は「炎症」です。
そして、炎症にはいくつか種類があります。
炎症の種類
基本的にはこれら3つが挙げられます。
❶石灰性腱炎
❷肩腱板損傷(または断裂)
❸肩関節周囲炎
では、一つずつ見ていきます。
❶石灰性腱炎
肩にある腱板の内部でリン酸カルシウムが結晶化したことが原因で、その周囲に炎症が起こり、その結果、痛みが出たり、肩の可動性が損なわれたりします。80%は中年以降の女性に起こります。
石灰が沈着しても無症状のヒトもたくさんいる一方で、急な激しい肩痛で全く肩を動かせなくなる人もいます。
■ タイプ
1)無症状
石灰が沈着しても無症状
2)急性症状
肩を動かせない程の激しい痛みにいきなり襲われるタイプで、最も多い症状とされる。治療としては、炎症部分へのステロイド注射、痛み止めの内服をすることで、1~2週間で落ち着き、かつ石灰物質も自然に吸収され痛みも消えていく。
3) 無症状と急性症状を繰り返すタイプ
無症状であれば問題ありませんが、急性症状を繰り返すようであれば、石灰物質を摘出したほうがいい。治療としては2番と同じ。
4)慢性症状
腕を挙げたときに痛い、使い過ぎると痛みが出るタイプ。治療としては、ステロイド注射、痛み止め内服とリハビリで1ヶ月ほど治療し、効果がなければ石灰物質の除去を図る。
■ 診断方法
X線(レントゲン)や超音波検査によって石灰沈着を確認できます。
❷肩腱板損傷(または断裂)
転んで肩を打ったり、加齢などで腱板が劣化することによって、これが切れることがあります。
腱板損傷はかなり痛みが強く、夜寝ているときに痛みで起きてしまうこともあります。また、時に自力では腕が挙がらず、支えられた手を離すと上腕が落ちてしまうこともあります。40代から多くみられる症状で、原因の95%は老化とされています。
■ 損傷の場合
不完全な損傷や、きわめて小さな損傷の場合は、リハビリで症状を改善していきます。猫背などの姿勢を改善するトレーニングや肩甲骨周りのストレッチ・筋力強化を行って、症状を抑えていきます。
■ 断裂の場合
リハビリで症状が改善しない場合や、完全に腱板が断裂している場合には手術を行います。手術といっても肩にメスを入れて切開してみたいな大それた手術ではないので恐れることはありません。詳しいことは整形外科で聞いてください。
❸肩関節周囲炎
それ以外の原因があきらかでない炎症で、軽症で済むか重症化するかの仕組みもはっきりしていない。
・肩に痛みと運動障害がある
・年齢が40歳以降
・明らかな原因が見当たらない
この3条件を満たすものを五十肩(肩関節周囲炎)と呼びます。
原因の特定ができないので、より「全体的な視点」で考えることが必要になります。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)について考える
特徴
・初期の段階では、肩関節付近に鈍痛が走り、腕の可動範囲の制限がおこる。
・痛みのピーク時には肩の痛みに加えて、腕全体にだるさや痺れがあることもある。常に腕をさすっていないと我慢できない患者もいる。
・片方の肩が発症してしまうともう一方も発症する確率が高い。
期間
・初期症状〜ピークを迎えるまで数ヶ月。
・ピークは数週間続き次第に和らいでくる。
・1〜2年もすれば自然と治ることが多い。
原因
次のようなことで肩関節部位に変化を起こすと考えられています。
■ 外的要因
・筋肉の硬化
・体のゆがみ
・加齢に伴う組織の変性(老化)
■ 内的要因
・糖尿病
・感染症
・自律神経障害
・ホルモンバランスの変化
これらによって、血行障害が起こり「炎症」となります。
四十肩・五十肩が発症する基本的なロジック
肩甲骨&鎖骨の動きが悪い
そもそも、肩関節は120°までしか上がりません。
そして、残りの60°は肩甲骨と鎖骨の動きでカバーしています。
つまり、肩甲骨(または鎖骨)の動きが悪くなると、その分だけ肩関節に負荷がかかって炎症の原因となります。
■鎖骨の動きについて
・腕を90°まで上げたとき、鎖骨は30°ほど上がります。
・腕を90°からさらに上へ上げていくと、鎖骨は軸回転しながら上がっていきます。
肩甲骨の動きが悪くなる原因は「手首・ヒジ」が内側へねじれて固まっているから
手首・ヒジの内側へのねじれ
↓
巻き肩&猫背(肩関節のズレ)
↓
肩甲骨の動きに制限
↓
腕を無理に動かして炎症
肩が上に上がってしまっている
肩が上に上がってる状態は、肩甲骨は実は「下方回旋」しています。
この状態で腕を上げるのは無理があります。腕を無理なく上げていくためには、肩が十分に落ちていることが重要です。
※肩を上に上げる(緊張している)筋肉は、僧帽筋上部と肩甲挙筋
四十肩の人が苦手な動作❶
四十肩や、肩が痛い人は、腕を外側にねじる外旋運動をすると肩に痛みが出ます。
この外旋運動を阻害しているのは、肩甲下筋、広背筋、大円筋、大胸筋といった腕を内旋させる筋肉の緊張です。これらをゆるめていくと、肩の外旋がしやすくなり、痛みも減ります。
四十肩の人が苦手な動作❷
腕が上げづらい人は、巻き肩の状態(回内)で、筋肉や靭帯が固まってしまってるため、回外の動きに抵抗があります。
四十肩の人が苦手な動作❸
下の写真のように、鎖骨や上腕骨頭をうしろへ引く(胸をはる)可動域があることが、肩甲骨を上方回旋するための最低条件です。これが出来ないと、腕は90°より上へ上がっていきません。
腕が上げづらい人は、巻き肩の状態で、筋肉や靭帯が固まってしまってるため、この形をとることができません。
四十肩・五十肩を自力で改善する方法
➀肩甲骨をゆるめる
猫背になり肩甲骨の動きを悪くしているのは、
鎖骨の下にある鳥口突起についてる3つの筋肉(烏口腕筋、小胸筋、上腕二頭筋)
それと、手首に繋がってる筋肉(腕橈骨筋、長掌筋)です。
固まってしまった、これらの筋肉をゆるめることで、肩甲骨の動きが復活してきます。
やり方は、こちらの動画を参考にしてください。
■ 手首・ヒジをゆるめる
上に上げると痛い→腕橈骨筋
後ろに回すと痛い→長掌筋
■ 胸・肋骨をゆるめる
小胸筋、広背筋
まだ、改善が見られない場合は
②骨盤のゆがみを矯正する
腹斜筋、腸腰筋の緊張をとる
③足をゆるめる
立った状態で肩が上げづらい人には、「京骨」というツボに刺激を与えることで、首や肩がゆるむことが多いです。
食事と栄養について
糖質(甘い物を減らす)
炎症の原因の一つである糖質をなるべく減らします。特に甘い物には大量の白砂糖が含まれているので、極力避けたほうが身の為です。
どこまで減らすかは、入れた分を全て使い切れる範囲まで。つまり、糖質が体内に余らないようにするのが一つの基準です。
タンパク質を多めにとる
そのかわりに、体の材料となるタンパク質を多めにとり、エネルギー源には脂質をとるようにします。
■ コラーゲンはタンパク質(肉、魚、卵)からとればいい
ちなみに、怪我や体の修復に「コラーゲン」が良いとよく言われますが、コラーゲンとはタンパク質の一種であり、人体を構成しているタンパク質の約30%がコラーゲンです。
つまり、コラーゲンドリンクみたいなものを頑張って飲まなくても、人間はそもそも、肉や魚からコラーゲンをいくらでも生成できるのです。
ビタミン・ミネラル
さらに、ビタミンC、Bで体の修復を促進し、マルチミネラルで全体の調整をはかります。
ちなみにマルチミネラルというのは、多種類のミネラルがバランス良く含まれていれば、それでいいので、サプリなどを使わなくても天然塩で十分です。
〇塩の正体
ビタミンC、Bに関しては、サプリでとったほうが楽だし有用です。
糖尿病だと四十肩・五十肩のリスク倍増
米国の整形外科医学アカデミーによると、糖尿病患者の10~20%が五十肩に悩まされているそう。
東京女子医科大学東医療センターの調査でも、肩の痛い中高年の患者に血液検査をして血糖値やHbA1cを調べると、糖尿病と診断された割合が約3割に上るという結果。
糖尿病がある人は、そうでない人と比べて五十肩になりやすく、治りにくいことが分かっています。
体の「糖化」からの炎症
糖尿病により血糖が高い状態が続くと、関節包などを構成しているコラーゲンが硬くなります。
これは「糖化」による現象です。
糖化とは?
糖質の過剰摂取または急な血糖値の上昇が原因で、余った糖質が体内にあるタンパク質と結合しAGEs(老化成分)に変性すること
活性酸素による酸化が「体のサビ」と言われるのに対し、糖化は「体のコゲ」と呼ばれています。
酸化も糖化も、いずれも炎症を引きおこす大きな要因になっています。
糖化 → 炎症 → 組織破壊
糖質(砂糖) を減らしたほうがいいと言っているのはこのためです。
というわけで、糖尿病のある人は五十肩の発症や悪化を防ぐためにも、食事や運動で血糖をコントロールすることがより重要になります。
【参考までに】糖化を防いでくれる物
・リンゴの抗糖化作用、抗酸化作用の効果
・レモンに含まれるクエン酸
・お茶に含まれるカテキン
・アーモンドのビタミンE
・ビタミンB群
しかし、当然のことながら一番重要なのは、糖質の過剰摂取をやめること。あるいは運動をして全ての糖質を消費し切ることのどちらかです。
それをしない限り、いくら抗糖化作用の物を食べても効果は望めません。
最後によくありがちな注意点
鎮痛薬と湿布薬を整形外科などで必ず渡されますが、これらを長期的に使って治癒に向かうことは、まずありません。
基本的に「痛み止め」は、痛くて我慢できない時に仕方なく使う程度のものであり、1週間以上続けて使用するとか長期の使用には全く適していません。
あくまで、「我慢できない痛みを抑える」ための薬であって、治すための薬ではないということを理解しておかないといけません。
むしろ、使えば使うほど回復が遅れます。
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